経営理念は企業の最高戦略

再び、三度、経営理念である。

 

というのも、最近また経営理念をキチンと作ろうという会社とのご縁ができたからだ。有り体に言えば、その会社はこれまで経営理念を意識してはいたが、作ってはいなかったのだ。

 

そこで、新年度を期して経営理念を制定して、会社の進むべき道をしっかりと示し、全社員とともに歩んで行くことを目指していこうとなったわけだ。

 

素晴らしいことだと思うと同時に、サポートさせていただくことに感謝をしている。これまでも何社か、理念づくりや経営理念を含む経営計画の見直しにタッチしたが、これを機会に私自身も再度学び直してみたい。

 

言うまでもないが、経営理念は企業の最高戦略であり、会社として目指す方向だけでなく、その存在価値をも世の中に示すものである。企業活動の大本であり、羅針盤であり、心の拠り所だと言ってよい。

 

ということは、企業理念がないということは、目指す方向が曖昧模糊であり、存在価値を明示していないということになる。羅針盤がないので迷う可能性があることにもつながる。

 

もっとも、色んな会社の経営理念を目にしてきたが、中にはとってつけたような代物が少なくない。どこかの書籍から抜き書きしたような言葉が並んでいたり、美辞麗句を並べたものや長々しい訓示みたいなものまで多種多様だ。

 

一体この会社は何がしたいのだろうと、首をかしげたくなるものもある。それが悪いとは言わないが、押しつけられている社員の気持ちを考えるとどうなんだろう。

 

今度の会社は成文化した経営理念こそ現段階ではないが、しっかりした企業の存在活への意識がある。しかも、社員の中にもかなり浸透しているようで頼もしく思う次第だ。

 

おそらく経営者の意識の中、つまり頭の中にはいくつかの要素(エキス)があるのだろう。それをまだまとめきれないでいるのだと判断している。よって、ディスカッションを通じて言葉とイメージを引き出すことになるだろう。

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その中からずばり会社の方向(性)や存在価値を表す言葉を、素直にまとめていけばいいはずだ。それも、経営者自身の言葉であるべきだ。言葉の長短は関係ないが、できれば端的に表現していきたい。

 

言葉を唱和することによって、経営者の考えているこの会社の将来がイメージできれば申し分ない。全社員の心の中に、常に拠り所としてあるものにしたい。

 

こう言うのも、そうでない経営理念が目に付き鼻につくからだ。世の中でのお役立ちとか、お客様第一主義だとか、「言ってることとやっていることが違うだろう!」という類が多いからだ。

 

その愚は犯すまいと思う。だから、経営理念と合わせて経営方針をしっかりと立てておきたい。もちろん、その第一は「全社員の幸福」だ。経営者は社員を大切にし、社員はお客様を大切にする、これ基本でありたい。

 

方針が確立すれば、目指す方向は自ずと定まってくる。必ず、いい経営理念ができるだろう。経営者の姿勢、そして会社の中の雰囲気を感じてそのように確信している。

就職活動は入学したらすぐに始めるのがいい

経団連の「就活」協定見直し(廃止)の動きに、賛否両論がある。一定の歯止めがないと、いわゆる青田買いが行われ、また学生の本分である学業にも悪い影響がある。

 

一方で今のやり方では、協定を守る側が不利な立場に立たされている。経団連加盟の企業以外は守っていないのだから、有名無実になっている。

 

とまぁ、それぞれの立場で色んなことを言っているのだが、企業はどういう論理で考えているかというと、これは私の想像であるが「採用コスト」をどう見ているかではないかと。

 

今現在のやり方でも、年々採用のコストは上がってきているという事実がある。何しろここのところ「売り手市場」の傾向が強まっているので、コストも上がって然りなのだろう。

 

私の時代は協定も何もないというのか、完全に自由だったと思う。もう50年近くも前の話ではあるけれど、気の早い同級生は3年次の秋頃からもう活動を始めていたようだ。

 

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私の家にも各企業のリクルート情報、すなわち企業案内・採用案内が、毎日のように大きな封筒で届いてきたのは年明けからだったかな。

 

当時はインターネットなどない時代だから、すべてがアナログだった。どうしてたくさんの案内が届いていたのかはよく分からない、勝手に届いていたからだ。

 

つまりこちらから請求をしているわけでもない、大学生名簿辺りを手がかりに送っていたのだろうか。学生名簿なども、ゆるゆると出回っていたのだろう。

 

いずれにしても手元に届く案内の中から、適当に返信(ハガキ)をしながら企業訪問を申し込む。私は周りがかなり決まりだした4月頃から、焦り始めたと記憶している。

 

それでも10社近くのアポイントを取って、東京、名古屋、大阪の企業本社を訪問した。リクルーターだけがあってくれた会社から、役員面接まであった会社まで様々だった。

 

家に戻ると、翌日くらいからは電話や郵便で「採用(内定)通知」が来た。3社来たと思うが、結局最初に電話をくれたところに決めた。それが5月の中頃だったと思う。

 

何もかも廃止して、大学に入学したら1年次からすぐに就職活動をやればいいのだ。その代わり数年かけてじっくりやるのだ。企業も学生も真剣に長時間向かい合えばいい。

 

つまり男女の仲もそうだが、じっくりと交際期間や婚約期間をとるなりして、お互いのほとんどを知り尽くすところまでやればいい。早めに決めた方が学業にも打ち込める。

 

企業も学生に、入社前までに「こんなことを学んできてほしい」とか、「こういう資格を取っておいたほうがいい」と要求すればいいのだ。

 

小さな会社の方が、もしかしたら有利になるかも知れないと私は思っている。小回りが利いて、コミュニケーションも社長自らがじっくり取れるに違いない。

 

どうなるんだろうね、楽しみでワクワクしているのだが。

いつまで全部原価で管理しているの?

数ヶ月前のことだが、ある製造業の経営者の方からこんな質問をいただいた。

 

MGMQ戦略ゲーム)を何度か体験して、西(順一郎)先生はじめ何人かのインストの方からの講義を受けて、直接原価が経営管理には有用であることは分かった。

 

しかし、実際現場でどうやっていいのかが分からない。毎月の試算表でも決算書でも全部原価計算で、製造原価報告がくっついているわけだが、そこからどう直接原価につなげていけばいいのか。

 

おそらく、多くの製造業の方が同じ悩みを持っていることだろう。いや、悩んでいるだけ、直接原価を導入してみようと思われるだけ、御の字だとも言える。大半の方は、今のままでいい、あるいは仕方ないと考えている。

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税理士もこの経営者の思いには即座に答えられない。何しろ税理士の仕事は税金の計算で、せいぜいどう節税したらよいかを経営者に伝授すること、と言ってしまうと言いすぎだろうか。

 

実際のところ、全部原価計算ではじき出されている試算表や決算書のPL(損益計算書)を、どう加工すれば直接原価計算による「経営に役立つ計算書」にできるか、分かっていない専門家が多い。

 

ある税理士集団では、変動損益計算書と名付けて別資料をこしらえているが、残念ながらこの資料は全部計算による資料と余り変わりが無い、つまり役には立たない。

 

ことは極めて簡単である、あれこれ考えるまでもない。

 

すなわち、変動損益計算書の中から人件費(F1)項目、経費(F2及びF4)項目、さらには減価償却費(F5)を全て取り出して、固定費(経費)の中に入れてしまうことで片が付く。そんな乱暴な、しかしそれで良い。

 

言い換えると、材料費と外注費に類するものだけを変動費として計算すればいい。売上高から、その新たに計算した変動費を差し引いたものが売上総利益(粗利益)だ。

 

そんなに簡単にやって良いのですかと聞かれることがあるが、それでいいのだ。考えてみればいい、例えば労務費や法定福利費、福利厚生費、あるいは製造現場での教育費などは、製造量には無関係に発生する。

 

残業代や季節労働者、時間労働者の給与などは変動するではないかと茶々をいれる人がいるが、それも含めて固定費に入れてしまうのだ。あれは変動費、これは固定費などと、同じ科目で振り分けるからおかしくなる。

 

大雑把で十分だ、経営の要諦を把握するには。細かく重箱の隅を突っついてみても面倒なだけで、大要が変わることはない。変動しない費用などを変動費に加えることの方が、何よりおかしいではないか。

 

そんなわけで、くだんの経営者の方にもそのように申し上げたのだが、彼がその後やったのかどうかは定かではない。私のクライアントなら、尻を叩いてやらせるところなのだが。

 

あなたの会社がもし製造業なら、早い内にやってみた方がいい。きっと今までやっていたことがいかに間違っていたかとか、目から鱗の発想が生まれてくるだろう。

 

そのことだけは確約できるのだ。ちなみに、中小企業経営の神様・一倉先生は、かつて「全部原価があなたの会社をダメにする」とおっしゃいました。

ワークシェアリングは三方よしか?

ワークシェアリングについて書いてみる。働き方改革の中の施策の一つでもあるが、すでに企業の中でも実施されている事例もある。

 

ワークシェアリングについて基礎知識だが、つまり簡単に言えば労働者1人あたりの労働時間を削減し、会社もしくは社会全体の雇用数を維持、あるいは増加させようという考え方のことだ。00367600x510

 

何年も前から各地で、ワークシェアリング推進のためのセミナーが開催されたりしている。私の知っている社会保険労務士さんの何人かは、これを非常に熱心に推進されている。

 

しかし、このワークシェアリング(ワーキングシェアとも言うそうだ)は、果たして「三方よし」なのか、私は非常に疑問に感じている。三方よしとは、「企業もよし、働く人もよし、社会もよし」かということだ。

 

ワークシェアリングの一つの例を挙げてみよう。ある仕事があって、それをAさんという社員が一人で担当しているとしよう。Aさんは週に40時間、年間でざっと2000時間働いている。

 

これをワークシェアリングしようというわけで、Bさんを新たに雇用してAさんのやっている仕事を二人で半分ずつやることにする。週に30時間でも多いくらいだが、新たな仕事もあるはずなので年間1500時間としておこう。

 

ただ、Aさんの給与をそのままというわけにはいかない。時短にもなったのでこれまでは年間400万円の給与だったのを、34300万円に、もちろんBさんも同じ仕事なので同一賃金だ。

 

Cさんと新規採用のDさんの場合はもっと極端だ。やはり仕事を二人で担当するのだが、Cさんは月火水の前半3日間、Dさんは後半の木金土だ。給与はどちらも250万円の設定になる。

 

誰が一体メリットがあると思う? これまで未就業だったBさんやDさんは仕事を得て、正社員としての給与もいただける、ただしその額はさほど多くはない。Dさんなどはかなり生活が苦しいことが予測される。

 

会社は給与をこれまでは二人分800万円支給していたが、今度はこれが1100万円に増える。給与だけではない、法定福利費や福利厚生費、その他諸費用も倍までとは言わないが今までの5割増し以上だ。

 

社会はどうだろう、給与の総額が増えているから地元にお金を、今までより多く落としてくれるだろう。もっとも、それほど多くはない給与だから倍増などは期待できない。

 

お国はどうだろう、税収入は少し増えるだろう、社会保険料も少し増えると思われる。消費が増えた分の消費税も増えることになる。何より未就業者が減ったので、失業率が下がり、失業給付つまり税支出が減る。

 

ウーン、どうも三方よしとはいかないように思うのだが、皆さんはどう考えますか? 働き方改革推進の中で、ワークシェアリングも企業に要請されていくだろう。

 
あなたの会社はどう対応しますか。

お金を回せば会社は潰れない

経営は利益を生み出すための仕事だと、思ってはいないか。それは一面では正解だが全体を言い表してはいないし、利益だけを目指していては会社がうまくいかなくなる可能性もある。

 

そういえば、経営とは「金を回すための仕事」だと喝破された方もいらっしゃるようだ。確かにキャッシュフローを切らしてしまえば会社は立ち行かなくなるから、その通りかも知れない。

 

キャッシュが切れたら一巻の終わりだが、お金をただ溜め込んでも正解ではない。どう有効に使うか、極論すればお金がさらにお金を生んでくれることが大切だ。

 

もちろん、経営者が自分の為にお金を溜め込んでしまってはとんでもない話だ。お金は有効に、有益に使うことを心がけたい。とはいえ、小さな会社は溜め込むどころか、今日のキャッシュをどう回すかの方が課題だろう。

 

それこそ小さな会社の経営者にとって、最も重要な仕事の一つに違いない。キャッシュを切らさずちゃんと回っているからこそ、社員の皆さんも安心して仕事ができるってものだ。3

 

しかしながら、ここであえて書くのが『危機感』というキーワードだ。というのも、時々新たにサポート相談を受けることがあるのだが、経営者はともかくとして会社全体に危機感が感じられないことが多いからだ。

 

経営者と同じ危機感を持てというのは、言葉では簡単だがかなり困難なことだ。それは立場や役割が、経営者と例えば社員さんとでは異なるからだ。やむを得ないといってしまえばそれまでになる。(写真はイメージ)

 

私自身、大手企業の新人であったこともあるが、その当時その会社はかなりの崖っぷち状態に踏み込もうとしていた。だが新人社員の私は、そんな状態であることすらみじんも知らなかった。

 

次いでグループで1千人規模の会社に移ったが、その時にもかなり業績的に厳しかったことを、後から知った。一等地とも言える土地を売却しなければならなかったくらいだから、実質赤字だったのではないか。

 

そういう事態も知らずにいた体験から、任された小さな会社が大赤字を抱えていることを、まずは全社員にキチンとしってもらうことから始めた。包み隠さず全ての数字を公開し、私自身の分析についても正直に語った。

 

情報の共有とはそういうことだとは、その時に知ってはいなかったが、どうも間違っていなかったようだ。こういう状態だから、社員の皆さんの給料が余り上げられない、ほとんど出せない状況だということを語った。

 

その上で、この危機的な状況を打開するという方向について熱く語った。それができたらこうするではなく、こうするからみんなでやっていこうと言ったのだ。

 

とても黒字化まで待ってはいられない、しかしみんなの給料を(これだけ)上げて賞与も(*ヶ月分)出しながら、3年で累積赤を消し、5年で「まともな会社」にしていこうと宣言したのだった。

 

平たく言えば危機感を煽ったのだ。しかし合わせて夢の実現も確約した。この2つはセットであるほうがいい、危機感だけでは気持ちがマイナスになりかねないから。そして「約束手形は必ず落とす」のだ。

 

経営者は上手に危機感を煽り、会社を現状打破していく風土に変えていかねばならない。風土をつくるのは経営者だけではダメだ、社員はもちろん家族も、仕入先や協力先も巻き込んでいこう。やらねばならない。
 

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小さな会社よ、今こそガンバロウ!

日本の会社の内、997%(約380万社)が中小企業で、その内85%が小規模事業者だそうだ。言ってみれば、石を投げれば小規模企業に、あるいはその小さな会社の社長に当たるのだ。

 

ちなみに小規模事業者とは、製造業などでは資本金が3億円以下で従業員が20人以下、卸小売・サービス業では資本金5千万円(卸売業は1億円)以下で従業員数5人以下と定められていて、個人事業も含まれている。91aeiat2rl

 

従業員数でいうと全体の70%が中小企業に在籍し、23%が小規模企業に勤めている。以上は昨年発表された中小企業白書の数字(調査は数年前)だが、大きくは変わっていないはずだ。

 

そんな中小企業、なかんずく小規模事業者の元気がイマイチだと世間では言われている。確かに周りを見回してみても、業績不振にあえいでいる会社や人材不足に泣いている会社、後継者のいない会社などが多々ある。

 

だがしかし、その反対に順調な業績を上げている、いつも明るく元気な社員の笑顔が絶えない、後継者も一緒にがんばっている、そんな会社も間違いなくある。

 

両者の違いは何だろう。その違いを追求して、こうやればいいんだよと教えてくれている本も少なくない、というよりちまたに溢れている。みんながその本を読めば、、、うまくいくかどうかは分からないよなぁ。

 

儲かっているのは、そのベストセラーなるものを書いた人だけなんてことは、笑うに笑えないなぁ。だけど、現実はそうなのだ。

 

本に書いてあることを集約すると、他社と差別化するといいのだとか、ナンバーワンとかオンリーワンを目指すことだとか、そんなことが事例を挙げて書いてある。間違いではないと思う。

 

だがそのプロセスの中では、「ライバルに勝つ」ということが必要とされている。現実的に考えてみて、競争する存在つまりライバルのない状況は、余り考えにくい。たいていは大なり小なりライバルが存在する。

 

問題はどうやって勝つのかだ。商品の品質とかアイディアやサービスで勝つのはいい、ところが多くの場合は価格競争という泥沼の戦いになる。相手が仕掛けるから仕方が無い、それは言い訳に過ぎない。

 

商品の品質とかアイディアやサービスは、お客様の方に顔を向けているからまだ良い。お客様が喜ぶこと、お客様が求めていること、困っていることに視点を合わせていくことは良い。

 

なのに、いつしか価格競争といういったん足を踏み入れたら抜け出せない、底なし沼につかまってしまう。相手が倒れるか、それとも自分が倒されるのか、この時点でお客様が視線から消えてしまっている。

 

いや、価格の安さこそお客様が求めていることだと意地になっている姿を見るのは、とっても哀しいことだ。やがては疲弊してしまう、会社もあなたも、もちろん従業員の皆さんも。気が付いた時にはボロボロになっている。

 

そんな会社やお店から、お客様は買いたいと思ってくれるでしょうか。誰もが笑顔になれないような、不毛な競争はもうやめませんか、と色んな本にも書いてある。あなただって読んだはずだ、なのに。

 

ひたすらにお客様の方を見ようよ、あなたも従業員の皆さんも一緒に。笑顔を取り戻そうよ、その笑顔に出会えるからお客様があなたの会社やお店にやってきてくれるのだから。

利益は計算の答え、キャッシュは真実の姿

企業倒産は減っているという。確かに帝国データバンクの統計資料を見るとそれが伺える。

 
2018
年上半期の倒産件数は4029件で、前年同期4247件だから5.1%の減。2年ぶりに前年同期を下回り、半期ベースでは過去10年で最少となったそうだ。
 

また、負債総額は91111700万円で、前年同期は176557100万円だから、前年同期比48.4%減と、こちらも2年ぶりに前年同期を下回ったという。
 

これをもって「景気回復だ」と現政権は聲高に叫ぶのだろうが、それは一面的な見方だ。どんなに景気が上昇していた時期でも倒産はあり、また景気が悪い時期には当然ながら倒産があった。増減は単なる現象に過ぎない。
 

景気が良くても「不況型倒産」が最も多く、昨今はそれに「人材不足型倒産」が増加傾向にあるし、「返済猶予後倒産」なるものも増えているらしい。
 

後者は要するに金詰まりであり、その中には『黒字倒産』も当然に含まれる。ここ数年は、いわゆるリスケに対する規制も緩和されており、融資制度もその数を増している。にもかかわらず、現実に黒字倒産も後を絶たない。
 

ところでこの黒字倒産だが、意外にどういうことかということを知らない経営者が少なくない。総じて売上至上指向だったり、PLだけにしか目を向けない経営者に多いし、そういう会社は危険性も大きいと言える。Photo
 

要するにPL上では売上もそこそこで利益も出ているが、キャッシュが行き詰まって「金が払えない」で倒産してしまうわけだ。手形を振り出していて、その決済ができないということもある。
 

少し前のことだが、いわゆる学生ベンチャーを目指している大学生への経営ゼミをやったのだが、「会社が黒字でも、つまり利益が出ていても倒産します」と話したところ、目を丸くしていた。

 
とくに売上が伸びている時、もっというと急激に売上が伸びている時が一番危ないんですよというと、そんなバカなという顔をしていた。だが、それは現実のことで、売上が一気に伸びた時点で倒産した会社も少なくない。

MG
MQ戦略ゲーム)をやってみると分かることがある。それは、利益とキャッシュとは一致しないということだ。もちろん売上とキャッシュが一致するはずもないが、そういう基本が全然分かっていない。

 
PL(
損益計算書)上の利益は5つある。上から売上総利益(粗利益)、営業利益、経常利益、税引前当期利益、そして当期純利益の5つだが、このいずれもが「引き算の答」にしか過ぎない。

 
キャッシュフローMGでは、「PLは意見、キャッシュは現実」という言葉をひいて講義をしているが、「利益は計算(の答)、キャッシュは真実(の姿)」と言い換えてもいいだろう。

 
何よりも大事なのは手元の現金と通帳の残高だ。その合計金額を常に頭に入れておくことが大切だ。目先の売上や、計算の答えに過ぎない利益にばかり気をとられていては、黒字倒産という結果を招くかも知れない。
 
 
倒産という事態はある日突然にやってくるのではない、黒字倒産はなおさらだ。買い物に出る際に、財布の中身をしっかり確かめていくように、会社も毎日キャッシュに目を向けよう。クレジットカードで払えるからといって、安心していてはならない。

得意先倒産というダメージ(2)

ある方からご質問をいただいた、感謝。通常のMGとキャッシュフローMG(CFMG)とでは、「得意先倒産」リスクカードの内容が違うとのことだが、どのように違うのかと。

 

通常のMGでは、どのような場合でも一律に「特別損失に(現金)30円を計上」する。ただし、第2期のゲームでは免除されますし、第3期以降もダブル倒産は免除される。

 

一方キャッシュフローMGでは、「最も古い売掛金残額の1/2(上限60円)を特別損失に計上、ただし現金減はなし。残りは現金回収(集金)できる」となっている。

 

CFMGでは売上は原則として売掛金となり、時間をおいて集金の意思決定で現金化できるのだが、その売掛先が倒産してしまったということになる。

 

例えば150円の売掛先が倒産すれば、60円を特別損失に計上し、残りの90円は現金回収となる。特損分は決算時に第5表で、売掛金のマイナスとして計上することになる。

 

キチンと集金できておれば60円分も現金になるのだから、当然ながら60円分のキャッシュを喪失したことになり、営業キャッシュフロー(CF)が減少するわけだ。

 

もちろん売掛金の額が小さければ、その1/2なので少額の損失で済むこともある。ただし、第2期からこのリスクは適用になり、不幸なダブル倒産もありうる。Photo

 

何を学んでほしいか、それは売掛金は早めに回収(集金)すること、時には売掛金を分割・分散する工夫も必要だということ。手形回収もリスクを長期化するだけということなど。

 

現実の仕事の中では、倒産先の売上債権(売掛金/受取手形/未収金等)は、限りなく回収ゼロだと言える。私の経験でも、良くて数%の「配当」だった。

 

前回のコラムで述べた数百万円の倒産先も、結局回収できたのは限りなくゼロに近かった。中にはその僅かの「配当」を得るまでに何年もかかった例もある。

 

営業マンはこういったことに、以外に無頓着だ。売上アップには血道を上げるが、あるいは少し優秀な営業マンは粗利益にも目を向けるが、売掛回収は流れのままだ。

 

あるいは上にも書いたように、せっかく集金してきても手形をもらってきたのでは、回収の先送りにしかならない。その手形が本当に現金に変わるかの保証もない。

 

そんなわけで、MGでもCFMGでもどちらでもいいから体験していただき、キャッシュにもっと目を向け、神経を使っていただきたいと思うのだ。

 

前回も言ったように、得意先倒産の特別損失額は丸ごと当期利益(税引前)のマイナスになり、その結果として赤字に転落するリスクも大きい。

 

最終責任はもちろん経営者。社長にあるのだが、現場の人たちがキチンとした知識と意識を持ってほしい。

得意先倒産というダメージ(1)

経営のリスクは多々ある。小さなものから大きなものから、リスクに見舞われない経営は無いと言って良い。

 

MG研修でも「リスクカード」が用意されていて、金銭的影響のない「1回休み」くらいのものから、「得意先倒産」といったかなりの痛手になるものまで多種多様だ。

 

この「得意先倒産」は、通常のMGの場合は30円を払うという形でキャッシュが減る。キャッシュフローMGでは、残っている売掛金残額によって痛手の強さが変わるようにしている。

 

実際の会社の場合でも、得意先が倒産するとかなり強力なダメージを受けることになる。私も16年余りの小さな会社経営の中で、大小いくつかの倒産に出くわした。

 

小さなものでは、売掛金の数万円が回収不能になるくらいで済んだが、中には売掛金と受取手形の不渡りのダブルパンチで数百万円が回収不能になったこともある。

 

通常この場合は「特別損失」で経理処理をおこなう。そうなると、営業利益や経常利益面では影響を受けないが、税引前当期利益が大きくマイナスになる。

 

平たくいえば、利益が吹っ飛ぶわけであり、大きな倒産に出くわしてしまうと完全に利益がゼロ、あるいはマイナスになってしまう。Photo

 

それだけに平常から「売上債権管理」には気を遣っていなければならないが、実際には経営者の関心が高いとは言えない。どちらかといえば、数字は経理担当者任せだ。

 

もちろん債権額の管理は重要であるが、それ以上に得意先への目配りがもっとさらに大切であることを、感じてほしいものだ。

 

どんな倒産でも、必ずその前兆があるものだ。いきなりバタッということは少ない、必ずその何ヶ月か前(時には数年前)から変化が始まっている。

 

その変化を感じるのは当然だが、第一線の営業マンたちだ。彼らがまず、得意先の変化を感じなければならない。どんなことでもいいのだ、昨日と、前月と、昨年と違うことを見つけるアンテナが必要だ。

 

得意先の社長でなくても、担当者とのちょっとした会話の中から、あるいは同業耳を他社からの噂話でもいい、時には取引銀行からの情報にも耳をそばだてたい。

 

そういった情報を集積し、分析できる「道具」を持っているかどうか、それが経営者あるいはマネジャーの役割で、単なる数字ではない行間の情報も重要だ。

 

変化を感じたら経営者はすぐに手を打つ、まずは自ら訪問して状況を確認してくることだ。経営者独自の情報網もあるはずで、営業マン以上の情報を得ることもできるはずだ。

 

何度も言うが、得意先倒産の多くは突然リスクとして発生するのではない。必ず前兆、予兆があってそれが徐々に大きくなって表に出るものだ。

 

前述のように経営へのダメージは非常に大きい、普段からそのリスクに備えておかねば、実際に起こってからではもう遅いということをしっかりと心得てほしい。

採用は市場で自由競争

就活戦線(というのがあるのかな?)が揺れ動いている。経団連の中西会長が、新卒学生の採用選考についての現状指針について異論、明確に言えば廃止が妥当だと述べたのだ。

 

その発言要旨を引用してみることにしよう。Photo

 

『経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をしていることには違和感を覚える。また、現在の新卒一括採用についても問題意識を持っている。

ネットの利用で、一人の学生が何十社という数の企業に応募できるようになった。企業が人材をどう採用し、どう育成していくかということは極めて大事なことであるが、終身雇用、新卒一括採用をはじめとするこれまでのやり方では成り立たなくなっていると感じている。

各社の状況に応じた方法があるはずであり、企業ごとに違いがあってしかるべきだろう。優秀な人材をいかに採用するかは企業にとっての死活問題である。』

 

要するに、経団連加盟企業以外はこの指針を守っていない、とくに外資系企業は自分たちに先行して良い人材をかっさらっていく。自分たちも自由にやって当然ではないか、いうことなのか。

 

春に一括して採用するという習慣があるのは、どうやら日本などホンの一部の国らしい。それにはもちろん、メリットもデメリットもある。例えば「社員教育(集合教育)」という側面からは、非常に有利な採用法だ。

 

確かに現状を見ていると、指針・ガイドラインというものが空洞化しているという感じもある。例えば今の時期はいわゆる内定出し前ではあるが、すでにいくつもの内定を得ている学生がいるし、企業の囲い込みも盛んだ。

 

インターンシップなるものも、大学3年生を対象に公然と行われているし、もちろんそこに参加した学生がみんなその企業に入るわけではないが、そのことは学業の妨げにはならないのか。

 

もっとも、半数の大学生にとって大学生活は社会人生活前のバッファではないのかと、私などは思っているわけだ。無論、学業や研究、実験などに全身全霊をかけて取り組む学資も存在する、僅かだろうが。

 

大学生活に飽きたら、その時点でどんどん就職して仕事に就くべきだ、などと考えているわけではないが、企業の社員教育の仕組みを変えればそういうことにも対応していけるはずだ。

 

採用は市場で自由競争、それでいいと私などは思っている。そんなことをしたら、中小企業とくに小規模企業はなおのこと人材確保が困難になると言う方もいるだろう。

 

しかしそれこそ企業間の差別化であり、小さい会社だってオンリーワンの強さを持てば、負けることはない。今でも学生の応募が殺到するような、小さな会社もたくさん存在する。

 

そのレベルで言えば、日立などと威張っていても「有用な人材が採れていない」のではないかと、中西会長には言ってあげたいものだ。己の力の無さ、魅力の無さを制度のせいにするなどとはねぇ。

 

人材教育は人を育てるばかりではない、しかも新人を対象とするばかりのものではないわけだし、さらには企業自身をも育てていくものだと理解し取り組んでほしいものだ。小さいからこそできることがあると。

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