脳力開発は人間学であり行動科学です(158)

変革のための指針、第9条は「レベルの高い方が苦労するのは宿命である」。サブリードは、「真のリーダーにとって、困難と苦労が生じなければそれは異常」です。何だかリーダーへの慰めのような章ですが、実はその通りなんです。

 
 これまでにも書いてきましたように、組織や人をある方向に向けていこうというのは骨の折れることなのです。人の行動や思考の習慣、すなわち土台を変革に向かっていくようにするのは、一朝一夕にはいきませんので時間がかかります。

 
 その間、リーダーはじっくりと見守りながら、タイミングよく適切なアドバイスやフォローを忘れてはいけません。時には壁にぶち当たることもあるでしょうし、第一に相手はなかなか言うT_201704_262 ことを聞いてはくれません。しかし諦めてはいけないのです。

 
 レベルの高い方が苦労する、ここでいうところのレベルの高い人がリーダーです。リーダーにも専門性の高いI型リーダーと、総合力のT型リーダー、さらにバランスのとれたV型リーダーがいます。ここではTまたはV型リーダーを取り上げています。

 
 少し別の角度から見てみましょう。「2/6/2の原則」ってご存じでしょうか。組織の中の「じんざい」は、2割・6割・2割の割合でそれぞれ、人財と人在、そして人罪に分かれるというのです。どの組織にも共通する法則だそうです。

 
 人財は積極性があり、優秀な実績を残していく上位20%のグルー プ、人在は上下どちらでもない60%のグループですが多数派です。そして人罪は積極性もなければ実績も出ない、行動もしない下位の20%グループです。

脳力開発は人間学であり行動科学です(157)

数日後、多分若社長が私の言ったことを始めて実行した日だったのでしょう、勢い込んだ電話がかかってきました。曰く、「とんでもないヤツだ、あいつは!」と。とにもかくにも、相当な剣幕で怒り心頭という感じでしたが、これは予測の範囲でした。

 
 若社長は言われた通りに、A君が出社(数分遅刻)してきた時に朝礼の場から離れ、彼の前に立って「おはようございます」と一礼したのだそうです。ところが彼は返礼どころか、一言も発しなかったと、一気にまくし立てるのでした。

 
 そうだろうね、と私は冷静に答えました。当たり前です、すぐにすぐA君ができるくらいなら、これまででもできていたはずなのですから。「明日からもまだやるんですか?」「そりゃあPhoto 当たり前でしょう」絶句する様子が受話器から伝わってきました。

 
 途中経過は省きましょう。若社長は在社時には、毎日A君への挨拶と声かけを続けたのです。後から「よく続けたね」と褒めたものです。結果としてA君が軽く一礼を返したのが1ヶ月目くらい、ボソッと聞き取れないほどの声を出したのがさらに半月後。

 
 時間はかかりましたが、3ヶ月経つと何とか人並みに挨拶ができるようになりました。そうなると次は遅刻です。これにも秘策があって実行し、効果が得られたのですが、これについては公開のセミナーにご参加いただければお話ししましょう。

 
 長々と書きましたが、要は「人を変える」には「自分を変える」ことが一番だというか、それ以外に方法はないと断言できます。無いものねだりをするのではなく、やれることを地道に実行していく、それが最良唯一の方法と言えるのです。

脳力開発は人間学であり行動科学です(156)

私も早速、ある朝状況を観察に出かけました。じっくり眺めてみて、確かにこれは困った状況になってしまっているなと感じました。一番は、周りが新人A君を当てにすることなく、それどころか存在を無視しているようになりつつあるなと感じたのです。

 
 社長も「どうにかなりませんか」というだけで、お手上げのようでした。どうにかしたいよね、と私は言いました。もちろんですよと社長。ならば善は急げです。早速、処方箋を書いてあPhoto_2 げることにしたわけですが、その内容に社長はびっくり。

 
 まずは「彼がよくなるのであれば、君は何でもやるな」と社長に念を押しました。ハイ、できるだけと答えますので、「それじゃダメだ、ゼッタイに何でもやるのでなければ」と言いましたら、分かりましたとの答です。さて、処方箋です。その内容はこうです。

 
 これから会社にいる時は毎日、彼(新人君)が出社してきたら、遅刻していてもそれをとがめずに、君の方から(社長から先に)「おはようございます」と頭を下げて挨拶をすることを、励行しなさいと。

 
 ええっ!?と社長は絶句しました。私の方からやるんですか、そんなことをと言うので、そうだよと答えました。いやぁ、それはできませんと言うので、やりもしないで頭からできませんと言っているんじゃダメだねと突き放しました。

 
 煮え切らない返事が続くので、じゃぁもう君の会社の相談事は受けないよと言いましたら、「分かりました、やってみます」と社長。さて、翌日から・・・ではなく、彼が実際に始めたのはそれから数日経ってからだと、後から社員が言っていました。

脳力開発は人間学であり行動科学です(155)

こんな話もあります。コンサルティングの仕事を始めて間もない頃なのですが、とある青年社長から相談を受けました。彼は先代社長からバトンタッチを受けて、張り切ってトップとしての仕事をスタートしたところでした。

 
 相談内容は、この春に入った高卒の新入社員がいるのだが、鍛え直してくれないかと言うのです。その年の新卒採用社員はそのA君だけだったのですが、毎日のように遅刻はすPhoto る、出社して来ても挨拶もろくにやらない、返事も悪いのだと言います。

 
 「遅刻はするなよ」と何度も注意はしているが、一向に直らない。僅か数分の遅刻なので「もう5分早く家を出ればいいだろ」と言うのだが、生返事をするだけで、また翌日も遅れてくる。同僚や女性たちがおはようと声をかけても、まともに挨拶を返さないのだそうです。

 
 入社してからしばらくは、先輩社員やとくに女性社員が朝の挨拶はもちろん、気を遣って色々と声をかけていたのですが、何しろ会釈や返事もろくにしないものですから、「なんだあいつ」という感じで、彼を無視するような雰囲気ができ始めました。

 
 それでも新人A君は我関せずといった感じで、一向によくなる兆しがありません。部下たちの不満を聞いて課長や部長も彼に注意をするのですが、その時には小さな声で返事をしても、翌日にはまた元の木阿弥です。

 
 部長はやむを得ず若社長に状況を伝え、社長も数日間A君の状況を見てみましたが、なるほど困った状況になっていました。それでA君を呼びつけて直接説教を試みましたが、一向に改善されません。というわけで、知り合いの私に相談がきたというわけでした。

脳力開発は人間学であり行動科学です(154)

7条でも触れましたが、変革のためには、リーダーたる者は自らが動くことなのです。人を動かす前に、自分は何ができるのか、何をした上で周りを巻き込んでいくのかを考え、躊躇なく実行していくことが肝心です。

 
 私自身も脳力開発を学ぶ以前は、カタチの上では組織のリーダーたる地位にありましたが、人の好き嫌いが強かったり、また人に任せることも余りできない性格でした。そんな時にT_ 教えられたのは、うまくいくのもいかないのも全て自分の行いのせいだと。

 
 人をもし変えようと思うのだったら、まず自分が変わりなさいと諭されました。その時には、それでどうなるんだと反発の気持ちが働きました。何で自分が変わらなければならないのだ、変えるべきは相手の方ではないかと。

 
 相手を変えたかったら、まず自分を変えなさい。半信半疑ではありましたが、とにかくやってみようかと始めて見ました。しかしそんなにすぐに変化が訪れるはずもありません。何でだという思いで、反発さえ覚える有様でした。

 
 これでは相手が変わるはずもありません。また、一からスタートのやり直しを何度繰り返したことでしょう。その内に開き直りの心が生まれ、とにかくやるしかないだろうと、強い意識をもって臨みました。時間がかかってもしょうがないとも。

 
 私自身は実は余り気付きませんでしたが、数ヶ月たった頃に別の人から言われました、「最近、君の課の
△△君だけど、やる気が出てきたようだね」と。そう言われてじっと見ていると、確かに以前とは動きが変わってきたように見えました。

脳力開発は人間学であり行動科学です(153)

自分の原則(主体性)を自分の中に土台として、確固として持っている人は、他の人(やもの)に対して協力や協調ができます。自分にゆらぎがないのですから、自分を信頼し同時に相手のことも信頼できるということになります。

 
 リーダーにはこの原則を持つことが欠かせぬ要因です。ところが中には、原則(主体性)を持つのだといって、原則に固執し、何でもかんでも原則に当てはめて考えたり、自分の原則ばかりを尊重し、他を無視してしまう方がおられます。

 
 こういう方は「自分だけよしの姿勢」になってしまい、根本的な協調性や協力性を損なう行動をとってしまいがちになります。本当の相互協調や相互協力は、互いの原則を、互いに尊重し合うところから始まるのです。

 
 変革のための指針、第8条は「まず自分が変われ、さらに一歩変われ」。サブリードは、Photo_2 「それが変革の原動力」です。他人を変えることはできません、原則不可能ですし、他人は変わらないのが当たり前だと以前にも申し上げます。

 
 変えられないもの(人)を変えようとムダな努力をするのであれば、変えられるもの(人)、すなわち自分を変えていくのが筋道であり、また近道でもあります。でも世の中には、一所懸命「人を変えよう」とがんばっている方がおられます。

 
 挙げ句の果てには、変わらない相手を怒鳴りつけてみたり、罰で相手を追い込んでみたり、逆に甘い飴をぶら下げることまでやっているようです。表面的には変わるかも知れません、しかしそれは「見せかけ」あるいは「取り繕い」に過ぎません。

脳力開発は人間学であり行動科学です(152)

さて、周りの人たち(他人)は「活用する条件」と書きましたが、他人にやってもらう、あるいは他人に任せるには、ただ口で指示したりお願いするだけでいいでしょうか。おそらく、それだけではすぐに実現はしないのが通常です。

 
 実現させていくためには、さらに「条件づくり」をしなければなりません。要は、こういった条件づくりと条件の活用などを、自ら推進していくこと、これこそが自分で主体的にやる姿勢で201302 す。実現するまでやりつづけること、リーダーの務めです。

 
 とはいえ、条件づくりの仕方が問題です。細かいところまで緻密に組み立てをして、その1から10までをやってもらおうとすることは、果たして正解なのでしょうか。目的や目標を示して、当面の到達点を示せばそれでいいのでしょうか。

 
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から10まで細かくやり方までを指示する、これを戦術指示といいます。反対に目的や目標だけを示し、当面の到達点だけを指示して後は任せる、これが戦略指示です。どちらがいいのでしょう、実はどちらとも言えません。

 
 正解はありません、ケースバイケースです。あえて言えばバランスを考えて指示を出すことでしょうか。その他人、個人でもグループでも組織でも、その特性を判断し、戦略と戦術のバランスのとれた指示を出していくこと、それがリーダーなのです。

 
 その時に大事なことは、リーダーとしてしっかりとした主体性を持つことです。主体性とは、言い方を変えると「自分の原則」を持つということです。原則が確立されていないと、フラフラして周囲の状況に流されてしまいます。

脳力開発は人間学であり行動科学です(151)

変革のための指針、第7条は「与えてもらうのを待っているばかりでは流されるだけである」。サブリードは、「誰がやるのか? 自分は何をするのか?」です。先回りして言うと、人頼りの姿勢ではいけないよと、何も起こらないよということです。

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 私が主宰している脳力開発セミナーでは、いつも次のように言っています。棚からぼた餅は口には入らないし、二階からの目薬は目にちゃんと入ってはこないよと。何かいいことが起こらないかな、誰かがやらないかと待っていてはダメなのです。

 
 企業のトップにも時々こういう方がいらっしゃいます。非常に明快で、しかも素晴らしい経営理念を掲げられるのですが、社員に丸投げされるだけで後はお任せ。そして社員が動かないことを指して、ウチの社員はダメなヤツばかりだと嘆かれる。

 
 もちろん、人頼りの姿勢の対極にある「自分でやる姿勢」というのは、何もかも自分でやるというわけではありません。第一、何でも一人だけでできるものではありませんし、殆どの仕事は周りの人たちの協力なしでは為し得ないモノです。

 
 人に頼んだり人を使ったりすることは、決して人頼りではありません。それどころか、場合によっては人に任せることも必要なのですし、それによって人が育つということにもつながります。言い換えればこれは「条件の活用」であって、必要なことです。

 
 ではどういうのが人頼りなのかというと、「頼んだ人がやってくれない、どうにもならない、お手上げだ」といった心の習性が人頼りなのであり、実現するまで様々な手を打ち続ける心構えをもっていこうということなのです。

脳力開発は人間学であり行動科学です(150)

またちょっと私の現役時代のお話です。企業再建への道筋がようやく見えてきても、どうしても私のやり方、とくに全員受講を決めた研修(MG・脳力開発)や「一人1台」を目指したパソコン活用に、どうしてもなじめない、反発する社員さんがおりました。

 
 ついには「辞めます」と切り出され、その時点では辞められては困るという気持ちが強くて慰留しました。ただし、社員としてやってほしいことについては妥協せず、いくらか本人の自Photo 主性に任せることで少し緩めた対応をしました。

 
 そのまま数年が経過して再建も成果が現れ、大半の社員さんが私の路線にしっかり乗ってきてくれましたが、その方はついに自説を曲げることなく、再び「辞めます」と切り出されました。今度は「そうですか残念ですがやむを得ませんね」と答えました。(イラストはネット掲載のものを拝借しました)

 
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年間いた会社で、定年退職や寿(妊娠)退職以外でお辞めになった社員さんは、その方を入れて3名でした。少ないからいいというものではありませんが、私が信じたやり方に対して反発しながら辞められた方は、その方だけだったと考えています。

 

ある意味ではその方に申し訳なかったと思います。しかし、そのままずるずると引きずっていれば、せっかく同じ方向に向かって進んでいる他の社員さんの、気持ちを裏切ることになるという思いが強くありました。何とかできなかったかなぁと、今でも思いますが。

 
 どんなに正しいことでも、強い思いと信念をもってしても、動かしがたい他人は存在するものです。めげていては先に進めません。時には「泣いて馬謖を斬る」ことも必要なのです、リーダーはそういう責任も負っているのですから。

脳力開発は人間学であり行動科学です(149)

ではどうしても、他人や周囲は思い通りにならず、言うことを聞いてくれないものでしょうか。原則はそうです、でも世の中を見渡してみて下さい。いや、あなた自身でも、例えばCMや広告に惹かれてモノを買ってしまうことがありませんか。

 
 それは、売り手あるいは広告の発信者の意図に、見事に乗せられているのかも知れません。彼らの思い通りになっていて、言うことを聞いてしまっているのではないですか。誘導セールストークなどというものも、あるようですね。

 
 そして、もし他人や周囲があなたの望むようなカタチで動いてくれたら、感動モノであり感謝感激です。しかし、そのためには脳の力を最大限発揮しなければなりません。小さな感動、感謝感激が積み重ねられるように、あなた自身が動くことに他なりません。

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 「やってみせ 言って聞かせて させてみせ ほめてやらねば 人は動かじ」とは、太平洋戦争時の連合艦隊司令長官・山本五十六の言葉です。あなた自身も体験がありませんか、ちょっとしたことでも褒められると「またやろう」という気になること。

 
 五十六の言葉には、まだ先の先があります。それは「やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず」です。あなた自身が周りの人を信頼していますか、非難などせずにじっと見守って、時に適切なアドバイスをしていますか。

 
 あなたが信頼するから、周りもあなたを信頼してくれるようになるのです。信頼して任せて、もし小さくても成果が出て一歩進めば、心から感謝して褒めるべき時は褒める。そういう感謝と感動が、次のステップにつながるのです。

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